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繁請戸の田植踊は、苗を植える早乙女、苗を運ぶ男役の才打ちの三つの踊りが重蔵、太鼓で鼓舞する中なる。早乙女が頭にかぶる「花笠」が美しい。花笠の花は紙で手作りされる。1 2 3 4 30祖先から受け継ぐ祈りの舞勇ましい相馬野馬追の伝統行事とは別に、庶民の生活に根ざして祈りとともに継承されてきた伝統行事がある。日本の各地に残る多くの行事は農にまつわる儀式や芸能だ。その年の豊作を願い、あるいは豊作に感謝をし、土地の神様に芸能を奉納する。歌や踊りによって、楽しいこと好きの神様を喜ばせることが奉納の意味なのである。しかし、日本各地の町や村で毎年繰り返されてきた伝統の行事も、時代の波に呑まれ、継承する担い手がいなくなり、これまで数多く消えてきた。歌も踊りも、先達が後進に直に伝えなければ、いとも簡単に消滅してしまう。福島の伝統行事もそうした時代の波と無縁ではないが、浜通りにはそういう芸能を、しっかりとした継承の意志をもって今も伝え続ける人々がいる。た「田」は稲の実りを願って行われる東北に伝わる伝統芸能の一つで複数の地域で継承されているが、町によって踊りも衣装も違う。そのなかでもっとも華やうけかな衣装と優雅な舞いで目を引くのが浪江町の「請の田植踊」だ。地元の苕くさで田植の野戸うえ植おどり踊神社の安波祭どのば子きこうささまつりあん時期である5月より3か月早く2月に奉納されてきた。始まりは17世紀の江戸時代に遡る。請戸は震災によって神社も祭りの衣装も津波で流され、災害危険区域に指定された町からは人が消え、町民は全国に散り散りとなった。「このままでは田植踊が消えてしまうと思ってね。伝手を頼って材料を集め、衣装を手作りして、あちこちに散った子たちに連絡をして、震災の5か月後にいわきに集まって踊ったんです」と請戸芸能保存会の佐々木さんが話す。田植踊の素朴な歌が流れると、その場は江戸時代の世界にタイムスリップする。太鼓の音が響き、早乙よ女が手にする竹製の鳴り物、四が動きに合わせてカチッ、カチッとリズムを刻む。稲作文化の社会の中でしか生まれないであろうゆったりしたリズムは、どこしげさいぞうなかはながさだけツ竹1 請戸の田植踊。早乙女に扮した松本理奈さんが日本の伝統楽器、四ツ竹でリズムを刻みながら踊る。2 鹿の衣装を身に着け熊川稚児鹿舞を踊るのは男児たち。江戸時代から続く祈りの舞だ。(写真提供・大熊町)3 かつて能舞台があったという場所で行われている葛尾村の能狂言。(写真提供・葛尾むらづくり公社)4 鉦と太鼓がにぎやかに鳴り響く、じゃんがら念仏踊り。いわき市内の浄延寺にて。我が町の踊りを未来へ

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