か夏さんは、Cafe & Gallery 秋を営んでいる。古民家をリノベーションしたカフェで、草野心平の著書を集めたコーナーもある。川内村育ちの志賀さんは震災後の川内村に20〜30代がいないことに気付き、村の存続に危機感を覚え、大学をやめて村に戻った。天山文庫や行政ではできないこと、たとえば移住してきた若者への協力、高齢化した農家と消費者を繋ぐことなどを自らやるため、かつて陶芸家の父親がギャラリーとしていたこのスペースを人の集まる場所として活用することにした。「私は自然に囲まれたこの川内村の環境が好きなんです。雨を嫌だと思わず、雨もいいなと思える感覚、残っている里山の文化、そういうものが」山み巳舎風 12 34 56 719里と山の暮らし1903年に現在のいわき市に生まれた詩人、草野心平。蛙の詩を多作し、蛙の詩人とも呼ばれた。心へ平が川内村の平沼に棲むモリアオガエルを見たいと新聞に書いたのが縁となり、川内村村民と交流が始まる。やがて心平は名誉村民となり、3000冊の蔵書を村に寄贈する。すると、村民たちがそのお礼にと心平の蔵書を収める家を建てた。それが天文庫である。詩人はたびたび訪れてはその家で過ごした。なだらかな山並みと田が広がる長閑な村の森の中に家は佇む。印象的なのは、伝統的な民家スタイルにアレンジを加えたモダンな建築様式だ。施工は1966年。建築は日本建築の権威であった山本勝。茅葺きの木造民家で、囲炉裏のある1階は開口部が大きく取られ、周囲の木立を屏風絵のように眺めることができる。2階は背の低い障子窓から1階を覗き見ることができ、茅葺きも屋根も一部が抜かれていて心平が「十三夜の池」と名付けた池を見下ろせる。調度品のデザインもこの家にマッチしている。ぶす伏かつてんざんここで心平は創作もした。池にはモリアオガエルがいたかもしれない。詩人が想像力を広げた家で過ごす時間は、時の流れを忘れさせてくれる。この天山文庫で来場者の案内をしている志賀風草野心平が川内村に惹かれた理由もこんなところにあったに違いない。ふうしゅうふうしゃ1 天山文庫。草野心平が村に寄贈した蔵書に加え、川端康成ら著名作家らが文庫を充実させるために仲間に声を掛けて本を集めた。約5000冊を収蔵。2 柱だけになる1階の開口部。森を背景にし、柱は木立のように見える。3 1階には囲炉裏があり、伝統的な民家の風情。4 秋風舎のカフェ空間。木のテーブルや椅子は、陶芸家であった志賀風夏さんの父親の手作り。5 秋風舎を運営する志賀風夏さん。天山文庫でも働いている。6 草野心平が好んだ平伏沼のモリアオガエルをイメージした秋風舎のメロンソーダ。7 秋の風の家を意味する秋風舎の看板。秋には紅葉に囲まれる。Cafe & Gallery 秋風舎古民家を改造したカフェは居心地のいい木の空間。川内村や村外の人々の交流拠点としても機能している。毎週金曜日〜月曜日の午前11時〜午後5時営業。天山文庫草野心平が寄贈した本を中心に収める文庫。草野心平資料館が隣接する。毎年7月の第2土曜日には天山祭りが開催され、川内村の伝統芸能などが披露される。詩人の愛した村で山村の静かな暮らしに触れる
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